自社について「ひとこと」だけ覚えてもらえるなら、何をアピールしますか。

■覚えてもらう価値のある「本物の魅力」

 あなたの会社の強みはなんですか?

 他社との違い(差別化要因)はどんなところにありますか?

 お取引先は貴社のどこを評価しているのでしょう?

 

 優れた経営者であるほど、これらの質問に、大演説をしたくなるものです。自社の強みを10も20も次々と語り出し、見込客や、金融機関の担当者を閉口させてしまっていないでしょうか。

 

 もちろん、熱く語る経営者はとても魅力的です。

 

 しかし、この情報過多で、多忙な、21世紀において、社会の人々が、貴社について本当に覚えてくれるのは、「ひとこと」です。

 

 その「ひとこと」は、グローバルな大企業であれば、ブランド・イメージかもしれません。例えば、自動車メーカーは、それぞれの企業や製品について、安全性、高品質、スポーティー、頑丈、高級、ファミリーなどのイメージを覚えてもらっています。

 大企業であっても、この「ひとこと」を覚えてもらうために、膨大な予算を使い、企業努力しています。

 

 個別の商品やサービスでは、カテゴリーに対して、すぐに思い出せるのは、普通は、3ブランドぐらいです。ビールのブランド、ペットボトルのお茶のブランド、いつものランチのお店、温泉宿、石鹸、通販サイト、クレジットカードなど、想起してみてください。一人が覚えられることには、限界があります。

 取引先や消費者は、本当の魅力、本物の1番を覚えます。デザートの美味しいお店。誕生日割引がすごいクリーニング店。いつか買いたいカメラ。

 

 お客さまにとって価値のある「自社の本物の魅力」を見つけ出し、アピールし、本物だとの信頼を得ることで、やっと、取引先や消費者に覚えてもらえます。

 覚えてもらい、必要なときに思い出してもらえれば、購入などの行動を見込めます。覚えてもらい、自信を持った推奨してもらえれば、口コミが広がっていきます。

 

■自分の会社の魅力は何か?

 自社の強み・弱みを見つけるには、SWOT分析があります。しかし、SWOT分析は、強みを書きましょうというだけで、どうやって自社の強みを見つけ出すのか、導いてはくれません。

 

 経営書・ビジネス書をみると、差別化要因が重要だ、と書いてあります。競合との違いです。しかし、自社の差別化要因は何なのか、どのように分析すれば良いのでしょう。

 

 以前は、貸借対照表をみて、重要な工場があるとか、設備機械がすごいとか、重機が何台あるとか、倉庫の広さがどうとか、自社の差別化要因を「目に見える、財務諸表に固定資産として計上されている資産」を見つければ良かったのです。

 しかし、ソフト化した経済では、お金を出せば購入できる設備のみでは、差別化要因にならなくなりました。すぐに、競合との差がなくなってしまいます。

 

 顧客満足を得ている要因がわかれば、自社の魅力も判るかも知れません。しかし、本当の顧客満足を知ることは、高度なアンケートを駆使しないとわかりませんし、企画・開発中の製品をどうするかは、未来の顧客に教えてもらうわけにもいきません。

 

■知的資産経営というフレームワーク

 

 自社の魅力、自社の差別化要因のうち、特に、「見えない資産」を探し出し、活用していく経営を、知的資産経営(IAbM)といいます。

 知的資産経営では、企業の見えない資産を、人的資産・構造資産・関係資産にわけてとらえます。また、業務プロセスなどの手順を洗い出して、そこから事業での強みを探し出します。とても手間のかかる作業ですが、一度この作業をしておくと、事業計画から、セールス・プロモーションから、資金調達計画から、人材募集まで、すべてに使える根源的なコンテンツを生み出すことができます。

 さらに、我々は、創業スクールでの実践などを通して、その見えない資産をどのように顧客にとっての価値に結びつけるか、という「価値創造のストーリー」を考え出します。このストーリーこそ、事業計画を支えるビジョンであり、あっさりと金融機関に事業内容を納得してもらう共感を生み出します。

 

 自社の「見えない資産(知的資産)」に着目することで、本物の自社の魅力を発見できることを、どうぞ覚えておいて下さい。特に、特許や商標などの知的財産権だけでなく、自社の人材や、自社がいままで築き上げた他社や社会との関係性を振り返って下さい。

 

 その魅力(=知的資産)の特徴こそ、お取引先や見込客に覚えてもらうべき「ひとこと」です。

 

 また、この知的資産経営の詳細につき、中小企業診断士の皆様向けに、実践的に学習できる育成コースがあります。

 

知的資産経営[IAbM]エヴァンジェリスト育成実践コース

 

 知的資産経営の方法論を学習できるのみならず、多数の経営者や他の士業との具体的な事例研究をし、資料作成の体験をすることができます。

 ワークが主体であるため、人数限定のコースであることをご容赦頂ければと思います。

 ご一緒に、知的資産を見つけ出し、価値を生み出すストーリーにしていく現場で、知恵を絞りましょう。

 

 

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鈴木 健治(弁理士・経営コンサルタント)

特許事務所ケイバリュエーション 所長

 

・育成実践コースでは、「経営戦略に役立つ知財・知識の資産化」を担当。

・経済産業省産構審小委員会の臨時委員、(財)知財研 知的財産の適切な活用のあり方に関する委員会委員、日本弁理士会中央知財研究所 知財信託部会の研究員などを歴任。

・著書に「知的財産権と信託」『信託法コンメンタール』(ぎょうせい)、論文に「知材重視経営を支えるツール群に関する一考察(月刊パテント)」などがある。

公式サイト: http://kval.jp/