知的資産とポータブルスキル

 9月19日放送のNHKのクローズアップ現代を見た方もおられると思いますが、テーマは“50代でも遅くない中年転職最前線”でした。ポータブルスキルに注目し、ポータブルスキルを活用した転職の成功事例を取り上げています。

 スキルは、テクニカルスキルとポータブルスキルに分類されることがあります。テクニカルスキルは弁護士・税理士など資格が必要なスキルやTOEICなどの語学力、技術などの専門的な知識・経験などと言われます。転職者の募集は、テクニカルスキルを要件にされることが多いのではないでしょうか。ポータブルスキルとは、その名の通り個人が持ち運べる能力ですが、業種が変わっても通用するスキルと言われます。

 ポータブルスキルは、大きくは対課題、対人に分けられますが、対自分を加え、3つに分類されることもあります。対人は人との関わり方(コミュニュケーション能力)、対課題は仕事のし方(課題や仕事の処理能力)、対自分は行動や考え方のセルフコントロール能力のことと言われます。対人と対課題は対極にあり、どちらかが強い人は、もう片方は弱いことが多いとも言われます。

 一方で、当法人のテーマである知的資産経営における分類項目にも人的資産(ノウハウ、技能、経験、モチベーションなど)があり、従業員が退職する際に持ち出される資産を指します。これには、上記の個人のポータブルスキルも含まれると考えます。

 これからはAIの時代と言われます。最近のGoogle翻訳などは目を見張るものがあり、一部のテクニカルスキルはAIに取って代わられるものが出てくるでしょう。しかし、AIは過去の経験を分析し、最善解を探すものであり、人の持つコミュニケーション能力や創造力とかは持ち合わせていません。

 クローズアップ現代でもそうでしたが、ポータブルスキルはどちらかと言うと転職や職業のマッチングと言う面で取り上げられていることが多いようです。厚生労働省のサイトにあるポータブルスキル活用研修でもターゲットにしているのは、“採用・就業における年齢の壁の克服”だったり、“異なる産業・職業へのキャリアチャレンジの支援”といった、やはり転職をターゲットにしたものです。

 確かに、ポータブルスキルに着目し、その会社で必要としているポータブルスキルを持つ人を採用するのは、必要なことだと思います。しかし、既にいる自社の従業員のポータブルスキルの棚卸しなど、人的資産の棚卸しや人的資産を活用する活動がもっとあっていいように思います。

 

投稿者 | 熊谷 敦