世間では、「おカネに色はついていない」と言われるが、そんなことはない。そんな風に考えるから、資金繰りの破綻を招く。そもそも単なる資金繰り手当ては事業資金調達とは言わない。それを是としている健全企業の経営者が居るなら、お目にかかってみたいものだ。そのような企業経営者は事業資金調達の何たるかを理解しておらず、資金が不足すれば調達、余れば運用というように、出口しか見ていないだろう。彼はおカネの使い方を知らないのである。そう、おカネの使い方を知っているのが事業資金調達、おカネの過不足に出口対応しか採らないのを単なる資金繰り手当てという。
子供に小遣いをせがまれた時のことを想像してみるといい。まず「いくら欲しいのか」と訊くかもしれないが、その後に必ず「そんな金、いったい何に使うのだ」と使い道を要求するだろう。単に、「今、お金が足りないから欲しいのだ」と言われたら「じゃあ、やらない!」と。そうではなく、「夏休みの自由研究で日本経済の現状を調べてみたいから、参考図書を買うのだ」なんて回答が返ってきたらどうだろう。「そうか、頑張れよ。将来、偉くなってお母さんやお父さんを楽にしてくれ」と励ますのではないか。但し、彼にそんな力がないなら「お前がそんなこと考えたって無駄だ」と一笑に付すかもしれない。
つまり、こういうことだ。単なる不足補充では、言下に否決。使い道が健全なら、実現可能性と果実の検討、しかる後にお小遣い支給という段取りが踏まれる。これはそっくりそのまま大人の経済活動に当てはまる。
日本経済は景気回復基調が続いているが、巷にその実感はなく力強さに欠けている。アベノミクスが目指しているとおり、新しい事業がどんどん興って新陳代謝が進む形で経済を力強く押し上げていくのが本来の成長の在り姿であるはず。新しい事業が興る為には、そこに資金が投入されて事業に活かされなければならない。資金調達はその為の事業投資決定でもある。事業を興そうということと、資金をどこにどういう形で投入しようかという話はほぼ同義であるとも言える。
事業のどの部分にどのように資金を投入するかという資金の使い道を資金使途という。資金使途を第一に考え、実際の資金調達に関連して発生しそうな様々なリスクを想定して対策を考え、それらを踏まえた上で適切な調達手段を選択する一連の手順を事業資金調達という。機会があれば、その極意を伝授したい。
投稿者 | 金森 亨